開業から2年で5割の店舗が閉店してしまうという、飲食業界。苦しい戦いに追い込まれてしまう理由の一つに、 「店舗広告をないがしろにしているオーナーが多い」ということが挙げられます。
この記事では、飲食店経営者が陥りがちな、集客広告における失敗例と、安定した経営に持ち込むための黒字化のポイントをご紹介します。
◆まずは押さえたい!集客に必要な広告運用の注意点
飲食店の集客方法はさまざまありますが、少額から利用可能な広告運用はおすすめのツールです。この記事を読んでくださっている方の中にも、すでに導入しているという店舗も多いでしょう。しかし、
あなたの店の広告は、多くの人の目に届いていますか?
そして、見る人にお店の魅力をちゃんと伝えきれているでしょうか?
もしも今現在、広告運用を活用しているのに思い通りの集客ができていないなら、次の3つの落とし穴に陥っているかもしれません。
一度立ち止まって、自分の行動を振り返ってみましょう。
1. お客様目線で広告をチェックできていない
まず、どんな内容の広告を打とうか?という前に、
・ターゲット層のお客さんはどのサイトを多く見ているのか?
・どの媒体が自店の魅力を伝えるのに最適か?
という「広告の打ちどころ」を見極める意識を持ちましょう。
若年層にうける料理を提供しているのに、40代以上が多く見ているサイトや媒体に力を入れていては、当然ながら広告効果は弱まります。
多くのオーナーは広告媒体を見比べる視点を持たずに、無駄な広告費と労力を費やしています。また、他店と見比べられる「検索結果画面」で、自分のお店はどのように見えているでしょうか?
・広告文で端的に店舗の魅力が説明できているか?
・検索結果にどんな料理写真や内装が載っているか?
・スマホ、PCなどデバイスごとに掲載内容の違いがあるか?
という「お客さん目線」で、自店の広告をチェックすることをおすすめします。
このチェックを怠っているがゆえに、同じ画像が2枚掲載されていたり、看板商品やキャンペーンのPRが全くできていなかったりする店舗が、散見されているのが現状です。
グルメサイトや広告媒体によって、検索画面に表示される写真や項目が異なるので、
それらのルールを 網羅的に把握しておく必要があります。
2.グルメサイトの営業担当の提案を鵜呑みにしている
飲食店PRでまず筆頭に上がるのはグルメサイトですが、グルメサイトの営業担当とのやり取りには注意が必要です。
もちろんお店のメリットを第一に考えて販促プランを紹介してくれる担当者が大半ですが、売る側・買う側の関係である以上、すべての提案がお店のためになるとは限りません。
オーナー側が「売上を伸ばす」ことを目的にしていても、営業側が「契約を結んでもらう」ことを目的に話を進めるケースがしばしばあります。
「広告に関してはよくわからないので、営業担当にすべてお任せしている。」というオーナーが多く、営業側の説得力に負けて、無駄な販促費が発生してしまっている場合もあります。
この状況に陥らないためには、
・同業者にオススメの販促商品や販促の失敗例を聞いておく
・契約時に、広告に詳しい第3者に同席してもらう
といった事前準備をしておくことをおすすめします。
3.割引だから長期契約を結んでいる
グルメサイトをはじめ、飲食店の集客を手助けしてくれる業者は、基本的に長期契約を望みます。
先々まで収益を確定させたいのと、最終的に得られる収益の総額を高めたいからです。
そのため、長期契約の商品は、短期契約よりも月額が安く設定されているケースが多いです。
この「割引」に目がくらんで、1年や2年という長期の契約を安易に結んでしまうと、固定費(調節できない出費)がいたずらに増えてしまい、結果的に自分の首を絞めてしまうことになります。
固定費が増え、販促費が柔軟に打てなくなることは、トレンドの移りが早く、集客方法も多様化している現代の飲食店のマーケティングにおいて、かなりのマイナスです。
・7か月以上の長期契約は慎重に検討する
・契約期間途中での減額対応が可能か確認しておく
この2点はしっかり念頭に入れて、契約の検討をしましょう。
◆売り上げ黒字化のために!飲食店経営者が意識したい5つのポイント
「この前オープンした居酒屋、もう閉店したね……」なんてことはよくある話。決して甘くない飲食店経営ですが、もちろん順調に売り上げを伸ばし成功している店舗もあります。
何年も何十年も続く店として生き残るためには、黒字経営が必須。飲食店経営を成功させるため、経営者が常に意識しておきたいポイントを5つ解説します。
1. FLコストの分析で無駄を排除
飲食経営で経営者がしっかりコントロールしなければならないのがコストです。
腕利きのシェフが調理した高級食材を、大衆居酒屋価格で提供すれば、それはきっと繁盛店になるでしょう。しかし、そんなコスト度外視の無謀な経営では、あっという間に潰れてしまいます。
そこで指標にしたいのが、FLコストやFLコスト比率です。
F=フードコスト(Food cost)「食材費原価」
L=レイバーコスト(Labor cost)「人件費」
のことを指し、2つを足したものをFLコストと呼びます。
FLコスト比率(%)は、FLコスト÷売上×100で求めることができ、一般的な飲食店ではF(30%)+L(30%)の合計が60%以内になるのが目安。
60%を超えてしまっている場合はコストのかけすぎで赤字になる可能性が高く、閉店の道を進んでしまいます。
Fの比率が高い場合は仕入れ価格の見直し、Lの比率が高い場合は店の混み具合に合わせてアルバイトのシフトを見直すなどして、FLコスト比率を適正数値にするよう試みましょう。
2.ITシステムの導入で効率化
最近の飲食店では、ITシステムの導入が進んでいます。セルフオーダーシステムが良い例で、机上のタブレットやスマホなどからお客様が自由に注文でき、スタッフがうかがいに行く必要がなくなります。
これだけでも人件費削減に大きく貢献でき、オーダーミスや機会損失なども減らせるため一石二鳥。
他にも、在庫をコントロールして適正な発注を可能にする在庫管理システムや、スタッフの勤怠管理が簡単にできるシステムなども展開されています。
店舗に合ったITシステムを導入すれば、マネジメントが楽になり、無駄な損失を減らして経営の効率化につなげられるでしょう。
3.店舗コンセプトはターゲットに合わせる
「おしゃれな内装の飲食店にしたい!」「流行りの食材で目玉メニューを作りたい!」
経営者の想いや発想は会社経営に必要な要素ですが、それだけでは決して売り上げは上がりません。重要なのは、「誰に食べてもらうか」ということです。
例えば、高齢者向けの商品を、SNSでいくら発信しても集客効果は得られません。新聞の折り込みや、チラシを手配りした方が効果を得られるでしょう。
このように、売り上げを確立するためには、ターゲットに合わせることが必要になります。
店の立地、近くの競合店、世の中の流行なども含め、ターゲット層に沿った店舗コンセプトで戦略を立てることで、生き残る店舗に育っていきます。
店舗コンセプトは開店前にしっかりと決めているとは思いますが、開店後の客層などを分析して、微調整していくことも重要です。決して自分の理想だけで運営をしないようにしてください。
4. QSCを意識して店舗のレベルを維持
店のレベルを高く維持するために欠かせないのが、『QSC』です。
QSCとは、
Q…クオリティー (Quality) 「品質」
S…サービス (Service)「接客」
C…クレンリネス (Cleanliness) 「清潔さ」
のこと。
安定した品質の料理、来店から退店までのおもてなし、そして店内外やスタッフの清潔さを指しています。
どれか一つでも欠けていれば顧客満足度が下がり、「次はないな」と思われてしまう要因に。QSCの向上は、お客様をリピーターにつなげることに大きく貢献するので、働くスタッフ一同の、行動指針としたいものです。
「そうはいっても、何をしたら良いの?」と思う方も多いかもしれません。
まずは、飲食店として当たり前のことを、当たり前に行っていきましょう。レシピ通りの料理作りや定期的な掃除、入退店時のあいさつなど、現在自店舗が実行できることを徹底して行っていきます。
スタッフそれぞれができるようになったら、毎日の掃除箇所を増やしてみる、提供時に料理の説明を添えてみるなど、レベルを上げていくのがポイント。
無理のない目標設定をすることで、着実にQSCの向上が期待できます。
5.人材育成をおろそかにしない
近年飲食店業界は、人手不足に悩まされています。少子化やコロナ禍の影響で、今後も深刻になっていくと予想できるでしょう。
「人材」=「人財」ともいわれるように、人は会社の宝です。
飲食店は、スタッフの質が売上に直結しやすいので、重きを置かなくてはいけません。「あのシェフが作る料理が食べたい」「感じの良い店員がいるから通っている」と、お客様は「人」によって店に来店することも多々あるのです。
人材は育成という投資を行うことで、価値が高まっていく「人的資本」なので、採用した人材は研修や教育にしっかりとコストをかけましょう。
特に新人スタッフが辞めてしまうのは、店にとって大きな損失になります。採用までにかかった時間や費用を無駄にしてしまうので、スタッフが働きやすい環境づくりも意識してください。
スタッフが育ち定着することで、店の雰囲気が良くなり、客足が伸びる。そして、採用にかかるコストの削減にもつながります。人材育成は店の収益を伸ばす大きな武器の一つなので、決しておろそかにしてはいけません。
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